私は、長年介護施設の現場で入居相談を担当しております。
日々、ご本人様やご家族様から、介護にまつわる様々な悩みや不安をお伺いし、その方に最適な「第二の我が家」を見つけるお手伝いをさせていただいております。
さて、ご家族のために老人ホームや介護施設を探し始められた皆様は、まず何から手をつけるでしょうか。
多くの方が、インターネットで情報を集めることから始められるのではないかと思います。
その際に、「みんなの介護」のようなポータルサイトを利用される方は非常に多いことでしょう。
豊富な施設情報が網羅され、比較検討がしやすく、資料請求や見学予約まで無料でできる、大変便利なサービスです。
しかし、その一方で、「みんなの介護」の評判・口コミを検索すると、一部でネガティブな声が上がっているのも事実です。その代表格が、「電話がしつこい」というものです。
「一度問い合わせたら、何度も電話がかかってきて困った」
「仕事中に何度も連絡が来て、少ししつこいと感じてしまった」
このような声を目にすると、問い合わせを躊躇してしまうお気持ちは、痛いほどよく分かります。
私たち施設側の人間にとっても、皆様との最初の接点が、このようなマイナスの印象から始まってしまうのは、非常に悲しいことです。
そこで本日は、なぜ「みんなの介護」からの電話連絡が、時に「しつこい」と感じられるほど多くなってしまうのか、その理由を、普段はなかなかお話しする機会のない「施設側の本音」として、包み隠さずお伝えしたいと思います。
この記事を読み終える頃には、「なるほど、そういう理由があったのか」と、少しでもご理解いただけましたら幸いです。
なぜ、私たちは「電話」でお話を伺いたいのか
Webサイトのフォームに情報を入力すれば、メールやチャリンというチャット音だけで、スムーズに施設探しが進む方が楽だ、と思われるかもしれません。
もちろん、そういったご要望にもお応えできるよう、私たちも努力をしています。
しかし、それでもなお、私たちが「電話」という手段を大切にしているのには、皆様の施設探しを最高の結果に導くための、決して譲れない理由があるのです。
理由1:Webの情報だけでは分からない「大切なこと」を把握するため
皆様がWebフォームに入力される情報は、もちろん重要です。要介護度、ご予算、希望エリア、医療依存度…。これらは、いわば施設探しの「骨格」となる部分です。しかし、本当にその方に合った施設を見つけるためには、「肉付け」となる、よりパーソナルな情報が不可欠となります。
【事例1:田中様(仮名・80代女性)の場合】
息子の健一さん(50代)から、「みんなの介護」を通して、お母様である田中様の施設探しのご相談をいただきました。フォームには「要介護2、認知症は軽度、予算は月額20万円まで」と記載がありました。
この情報だけを見れば、ご紹介できる施設は数十件あります。しかし、私たちは健一さんにお電話を差し上げ、もう少し詳しいお話を伺うことにしました。
「お母様は、日中どのようなご様子で過ごされることが多いですか?」 「お食事の好き嫌いや、アレルギーなどはございますか?」 「お若い頃、何か熱中されていた趣味などはありますか?」
最初は少し戸惑いながらも、健一さんはお母様のお人柄について、少しずつ話してくださいました。
「母は昔、編み物が得意でね。今でも指先を動かすのは好きみたいです。あと、どちらかというと賑やかな場所よりは、静かに過ごせる環境の方が落ち着くタイプですね。ああ、それから、週に一度、透析が必要なんです。これはフォームに書きそびれていました…」
この電話でのヒアリングで、私たちは非常に重要な情報を得ることができました。それは「週1回の透析治療が必要」という医療ニーズと、「手芸が好き」「静かな環境を好む」というお人柄です。
もし、私たちが最初のフォーム情報だけで施設をリストアップし、資料をお送りしていたらどうなっていたでしょうか。健一さんは、透析の受け入れができない施設や、レクリエーションが活発すぎてお母様が気後れしてしまうかもしれない施設の資料を、延々と見比べることになっていたでしょう。貴重な時間を無駄にしてしまうだけでなく、いざ見学に行ってみて「条件が合わなかった」と、がっかりさせてしまったかもしれません。
私たちは電話でお話を伺えたことで、健一さんの手間を省き、「透析クリニックへの送迎体制が整っている」「手芸クラブがあり、落ち着いた雰囲気の施設」という、より具体的な条件で候補を絞り込み、ご提案することができました。結果、田中様は入居後すぐに手芸クラブに参加され、今ではご自身の作品を施設内に飾って、穏やかな毎日を過ごされています。
このように、電話での対話は、ミスマッチを防ぎ、入居後の生活の質(QOL)を大きく左右する「大切なこと」を把握するために、欠かせないプロセスなのです。
理由2:一刻を争う「緊急のニーズ」に迅速に対応するため
ご相談の中には、非常に緊急性が高いケースも少なくありません。「明日、病院を退院しなければならない」「在宅介護をしていた家族が倒れてしまった」など、文字通り、一刻を争う状況です。
【事例2:鈴木様(仮名・70代男性)の場合】
娘の美咲さん(40代)から、お父様の施設探しでご相談があったのは、平日の夕方でした。「父が脳梗塞で入院していたのですが、急遽、明後日には退院するように言われてしまって…。リハビリが必要で、車椅子での生活になります。どこか受け入れてくれる施設はないでしょうか」と、電話口の声は切羽詰まっていました。
このような状況で、メールでのやり取りをしていたら、どうなるでしょうか。私たちがメールを送り、美咲さんがそれに気づいて返信し、私たちがまた確認して…と、あっという間に1日、2日が過ぎてしまいます。
私たちは、すぐさま美咲さんとの電話で、お父様の詳しい身体状況、リハビリのご希望、ご予算などを集中的にヒアリングしました。同時に、私たちのネットワークを駆使して、近隣エリアで「緊急入居が可能」かつ「リハビリ体制が充実している」施設へ、片っ端から空室確認の電話をかけました。
ご相談からわずか2時間後。私たちは、3つの受け入れ可能施設をリストアップし、美咲さんに再度お電話しました。それぞれの施設の特徴、初期費用、月額費用などを口頭でご説明し、翌日の午前中にすぐ見学できるよう、施設側とのアポイントも全てセッティングしました。
結果、美咲さんとお父様は翌日に見学を済ませ、退院当日の午後には、無事に新しい施設へ入居することができたのです。美咲さんからは、後日「あの時、電話でスピーディーに対応してもらえなかったら、本当にどうなっていたか分かりません。本当にありがとうございました」と、涙ながらにお礼の言葉をいただきました。
このように、緊急時には電話というリアルタイムのコミュニケーションが、ご家族を路頭に迷わせないための生命線となるのです。一見「しつこい」と感じられるかもしれない確認の電話も、こうした事態を想定し、常に迅速な対応ができるよう準備していることの表れでもあります。
理由3:日々刻々と変わる「空室状況」というナマモノを捉えるため
老人ホームの空室状況は、驚くほど流動的です。特に、評判が良く、費用の面でも魅力的な施設は、空きが出るとすぐに見学予約が殺到し、数日のうちに埋まってしまうことも珍しくありません。
Webサイトの情報更新が、このスピードに追いつかないケースも、残念ながら存在します。皆様が「空室あり」という表示を見てお問い合わせくださっても、私たちが施設に確認した際には、既に申し込みが入っている…という事態は、日常茶飯事です。
【事例3:高橋様(仮名・90代女性)の場合】
ご家族が「みんなの介護」で見つけられたA施設は、ご自宅からも近く、費用も予算内で、何より施設の雰囲気がWebサイトの写真でとても気に入った、とのことでした。早速、資料請求と見学希望の申し込みをされました。
しかし、私たちがA施設に連絡を入れると、「申し訳ありません、昨日お申し込みがありまして、現在キャンセル待ちとなっております」との返答でした。
もし、私たちの仕事が、ただ右から左へと情報を流すだけなら、「A施設は満室でした」とメール一本で終わっていたでしょう。しかし、私たちは電話でご家族の落胆した声をお聞きし、「A施設のような、家庭的な雰囲気がお好きなんですね」「ご自宅から車で20分圏内がご希望ですね」と、改めてご要望を深く理解しました。
そして、「実は、A施設から車で5分ほどの場所に、最近オープンしたばかりで、まだあまり知られていないB施設があるんです。A施設と同じ運営母体で、雰囲気もよく似ていますし、今なら良いお部屋が選べますよ」と、Webサイトにはまだ掲載されていなかった最新の情報をご提供することができました。
ご家族は半信半疑ながらもB施設を見学され、結果的に「A施設以上に気に入った」と、すぐにご入居を決められました。
このように、私たちの頻繁な電話連絡は、常に最新の「空室」というナマモノの情報をキャッチし、皆様に最適な選択肢をご提供するための、いわば「情報収集活動」の一環なのです。もし連絡が途絶えてしまえば、その間に絶好の機会を逃してしまう可能性があることを、私たちは誰よりも知っています。
「しつこい」と感じさせないために。私たちにできること、そして皆様へのお願い
もちろん、私たちは皆様を不快にさせたいわけでは決してありません。「電話がしつこい」という評判・口コミがあることは真摯に受け止め、改善に努めています。
例えば、初回の電話で、ご連絡に都合の良い時間帯(例:「平日の12時〜13時の間か、18時以降」)や、ご希望の連絡頻度、メインで使いたい連絡手段(「まずはメールで情報を送ってほしい」「急ぎでなければLINEで連絡がほしい」など)を丁寧にお伺いするよう、全ての相談員が徹底しています。
そこで、皆様にも一つ、お願いがございます。もし私たちのサービスをご利用いただける際には、ぜひ、ご自身のペースやご希望を、遠慮なく私たちに伝えていただきたいのです。
- 「今は仕事中なので、後でこちらからかけ直します」
- 「平日の日中は電話に出られないので、メールで連絡をください」
- 「複数の施設を比較検討中なので、少し時間をください。来週また連絡します」
- 「おかげさまで入居する施設が決まりましたので、今後のご連絡は不要です」
このように、皆様の状況を率直に伝えていただけると、私たちもそれに合わせたサポートができます。特に、施設が決まった場合や、検討を一旦中止される場合には、その旨をお知らせいただけると、それ以上の連絡は一切いたしません。お断りの連絡を入れるのは、気が引けると感じられるかもしれませんが、私たちにとっては、皆様が無事に次のステップに進まれたという「良い知らせ」であり、安心できる情報なのです。どうぞ、ご遠慮なくお申し付けください。
結びに代えて
「みんなの介護」の評判・口コミで見られる「電話がしつこい」という言葉。その裏側には、Webの情報だけでは汲み取りきれない、お一人おひとりの人生に寄り添い、最適な「終の棲家」を見つけ出したいという、私たちの強い想いがあります。
それは、まるで頑固な職人が、最高の作品を仕上げるために、何度も何度も素材と向き合い、対話を重ねる姿に似ているかもしれません。そのプロセスが、時に過剰に映ってしまうことがあるのだとすれば、それは私たちのコミュニケーション技術が、まだ至らない点があるということです。深くお詫び申し上げます。
しかし、私たちは信じています。電話という、声の温度が伝わるコミュニケーションを通してこそ、見えてくるご希望や不安があり、築ける信頼関係があると。
もし、あなたが今、大切なご家族のために施設探しをされているのなら。そして、「みんなの介護」への問い合わせを、「電話がしつこい」という評判のためにためらっているのであれば。どうか、この記事でご紹介した私たちの「本音」を、少しだけ心の片隅に留めておいていただけると嬉しいです。
そして、勇気を出して一歩を踏み出してくださった際には、ぜひ、あなたの声で、あなたの言葉で、たくさんのことをお聞かせください。私たちは、その声に応える準備ができています。
皆様の介護施設探しが、不安なものではなく、希望に満ちたものになるよう、心から願っております。
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